地蔵盆とは?

地蔵盆とは?

提灯の写真

夏休み、宿題に追われながら子どもたちが心待ちにする8月24日の「地蔵盆」。23日の宵宮から夜店が出て盆踊りでにぎわう地域も多いことでしょう。
「地蔵盆」とは、そもそもどういう祭りなのでしょうか。

子どもたちが主役になって感謝する祭り

往来の辻や町なかの各所に立つお地蔵さん。まちの安全を支えて災いを防いでくれる「お守り」のような存在は、何より、子どもの守り神として信仰を集めてきました。「地蔵盆」はそんなありがたいお地蔵さんに、地域の子どもたちが寄って感謝するお祭り。同時に近隣の人々がお地蔵さんを囲んで、子どもらの成長と守護を祈って一体になる大事な地域行事でもあります。

8月24日を中心に行われ、それはお盆に近いお地蔵さん=「地蔵菩薩」の縁日が8月24日だから。昔は旧暦7月24日前後に行われて、今でも旧暦で実施している所もあるとか。ともあれ、遠い昔から地域に根づいて今に続く「地蔵盆」です。

江戸時代に描かれた絵図には、子どもたちが祀られたお地蔵さんに供物や燈明をささげたり、お地蔵さんの前で車座になって百万遍経の数珠繰りをしたり、盆踊りに興じる「地蔵盆」(地蔵祭)の様子が描かれています。すべての準備をするのは親や町内に住む大人たちですが、子どもたちが供養する子どもが主役のお祭りであることがわかるでしょう。

おさがりで「徳」をおすそ分けしてもらう

地蔵盆を迎えると、地域の人たちでお地蔵さんを洗いきよめ、前掛けや帽子を新しくし、提灯を吊り、絵行灯も飾るなどして、花と御供物を供えます。そして、子どももまじって御詠歌やお経を唱えます。数珠繰りや提灯に我が子の名を書いて親が奉納する風習も各地に残っています。

今では、地蔵盆といえば、供えたお菓子を子どもたちに配るイベントのようになっていますが、本来、地蔵盆というのは「祭り」ではなく「祀り」。ですから、お菓子を配るのも、いったん、お地蔵さんにお供えした物の「おさがり」を子どもたちに与える意図がある。結婚式でお餅を配ったりするのと同じ「ふるまい」の主旨で、お地蔵さんの「徳」をおすそ分けしているのです。

おさがりの菓子にはお地蔵さんの慈悲や功徳がこめられていて、それをいただくことによって子どもたちの健康や安全が守られる、そう信じられているからです。

地域のみんなで喜びを共有する「盆踊り」

地蔵盆は「おさめ盆」とも言います。「盆踊り」が地蔵盆の8月24日や宵宮の23日に行う地域が多いのは、お盆に戻って来られたご先祖様が「おさめ盆」にみなお帰りになる、それを地域のみんなで踊って送るもの。「盂蘭盆経(うらぼんきょう)」に書かれているように、餓鬼道に堕ちている母が救われた喜びを表現したのが本来の盆踊りなのです。

現代では、盆踊りは「おさめ盆」としてではなく、地域の人たちが楽しむお祭り的なものになっています。ですが、心のどこかに、恒例の盆踊りと年に一度、ご先祖様と出会えた喜びが重なっているのではないでしょうか。本来の盆踊りの名残りは、みんなが元気で一緒に踊れる、あるいは先祖の魂を迎えて送れる、そうした喜びを地域で共有している歓喜の表現が盆踊りとして残っているように思います。

受け継がれていく夏の思い出と縁の輪

今や、誰もがスマホを持つネット社会。人と人との直接のふれあいはどんどん希薄になっています。そんな現代に、地蔵盆と盆踊りはお互い顔を見合わせながら、子どもと一緒に参加して地域ぐるみで協力しあう数少ない機会と言えるでしょう。

地蔵盆や手作りの盆踊りは、夏のひとときを共にすごしながら地域の絆を確認し合い、連帯感を育み、はたまた新しい住人と親交を深め、バラバラになりがちなコミュニティをつなぐ大事な役目を果たしています。

一方、お菓子をたくさんもらい、近所の大人の優しさにふれて盆踊りや夜店を体験した子どもたちは、忘れられない夏の思い出として記憶します。そして、大人になった時、今度は次の子どもたちに同じことをしてあげようと思う。その意味で、お地蔵さんは時を超えて共同体の縁を結ぶ要の役割を果たしている。昔ながらの地蔵盆は減りつつありますが、地蔵盆や盆踊りを通してお地蔵さんがつないだ人のつながり、縁の輪が、地域の誇れる歴史になり財産になって受け継がれていくのだと思います。

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