お盆のキーワードは『食』

お盆のキーワードは『食』

家族集合の写真

わたしたちにとって「お盆」がなぜ大切な行事なのか、その点にふれましょう。

「お盆」というのはご先祖様が家に帰ってくる特別な日です。「お盆」には離れた所で暮らしてふだんは会えない子どもたちも帰ってきます。孫と一緒に帰省する息子や娘もいるはずです。そして、久しぶりに集まった家族が互いの絆を喜び合います。

ご先祖を囲む食事で「家族」を実感

私たちにとって「お盆」とは、家族のつながりを確認し合う大事な機会なのです。そのキーワードになるのは「食」、一緒に食べることです。年に一回、家族みんなで先祖を囲んで食事をして、今の暮らしぶりやこれからのことを語り合い、笑ったり悩みを相談したりしながら、家族が家族であることを先祖の前で実感して確かめ合います。

昔とちがって価値観も多様になっていますから、食べるものはお供えをおさげした精進料理にかぎりません。要は家族が顔を見合わせて先祖を囲んでごはんを食べることが大切なのです。

命のつながりに感謝するのがお盆

日本の歴史にはさまざまな戦や大きな戦争があり天災もありました。そういう幾多の苦難の時代を生き抜いた先祖がいらっしゃるから、我々は今この世にいるわけです。つまり、「お盆」は先祖を通じて、生きている人間が今生かされていることに感謝し、脈々と受け継がれた命のつながりと家族のつながりを感じ合う日と言えます。

現代では「お盆」といえば、夏季休暇で海外旅行やレジャーにあてる人も多いでしょうが、お盆ぐらいは実家に帰って、おじいさんやおばあさん、お父さんお母さんに顔を見せてあげてほしい。大事にするべき先祖は故人だけではありません。親もまた最も近い先祖だからです。

一人でもできる「観想」という供養

一方、核家族化が進んだ中で家族のつながりが薄れ、現実問題として一人暮らしの人や身よりのない人が増え続けています。そのため、お盆に家族と食事ができない人も少なくありません。お墓まいりもままならない人がいるかもしれません。

そういう方々は、宗派に基づいたお寺さんに相談したり近くの寺の「盂蘭盆会」に顔を出すのもいいでしょう。もし仏壇があれば、お経の一つでもあげればいいですし、「観想」をするだけでもいいでしょう。実際、一人暮らしの人はそうされてる方が多いのではないでしょうか。

自分の中にある「仏の心」に気づく

孤立していても、孤立しているからこそ、ご先祖に手を合わせて自分が今生きていることへの感謝の念を新たにして、「仏の心」を顕現(けんげん)されているように思います。それが「仏性(ぶっしょう)」。ふだんは気づきませんが、誰もがみな、まさに「仏の心」を持っています。「お盆」はそういう自分自身の「仏の心」に気づく機会にもなるのではないでしょうか。

(西宮・聖天寺のご住職のお話から)

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