脳血管疾患などの病気や骨折の後遺症により、手足が不自由になる方も少なくありません。それを改善するためのリハビリをどこまでできるのかは患者さんや家族にとって大きな問題。負担額の少ない公的医療保険や介護保険で受けることができるリハビリには限界があります。そこで、昨今、ニーズの広がりを見せているのが「自費リハビリ(リハビリテーション)」です。
制限を受けず時間も質も量も確保する自費リハビリ
最近、新聞などでも目にする「自費リハビリ」とは、「保険適用外」を意味し、すなわち全額自己負担のリハビリを指します。リハビリというと、ケガや病気で通常の生活が送りにくくなり、そうした症状を改善するための機能訓練というイメージがあると思います。
ですが、リハビリにも医療保険と介護保険を受ける方法があり、制度上のものなので制限がついてきます。たとえば、脳卒中の血管障害になると、リハビリは最大で180日しか適用されない、骨折手術をしたときは150日とか、医療保険では日数の制限があるわけです。
骨折なら骨が元のように回復すれば良いのですが、脳卒中など脳血管疾患だと後遺症が残ってリハビリには何年もかかる場合があります。現制度では医療保険が終わった後は、介護保険をうけてください、となりますが、介護保険にもまた制限がつくのです。
高齢者の方で要介護認定を受けた方は、通所リハビリのデイケアをはじめ、デイサービスでのリハビリもありますが、デイケアでは理学療法士と1対1でリハビリはできても1回20分の個別リハビリで、デイサービスでは集団でのリハビリになります。
また、ご自宅訪問のリハビリも1回1時間のリハビリを週2回までしかできない、という回数制限があります。
脳梗塞などは、本当はできるだけ早くリハビリをどんどん進めた方が回復は早いのですが、受けたくても受けることができない、そんな方が多くいらっしゃるのが現状です。
そういう時に、全額自己負担で保険外になりますが、自由に量も質も日数も回数も確保できるというのが「自費リハビリ」なのです。
一番効率のいい動きを一緒にトレーニングする
がん、心筋梗塞、脳卒中、という三大疾病は高齢者が発症しやすく、現代は高齢者が増え続けている中で、病院のベッド数や入院期間にも制限がかかっていて、あともう1ヶ月病院でリハビリを続けたいと思ってもできない、いわゆる「リハビリ難民」がこれからますます増えていくことが予想されます。
リハビリというのは、個人個人の生活事情や後遺症の程度などニーズが全く異なるので、やはりマンツーマンで細かにサポートを得ながら、あきらめず時間をかけて改善していくのが一番なのです。
自費リハビリを受けていらっしゃる方は、たとえば、骨折をされた方がペットを飼っているため入院はしたくない、でも、車椅子ではなかなか病院に通えないという方が自宅でできるリハビリを受けに来られる。
ギブスを固定しているときは動かせませんが、車椅子の移動のしかたや、車椅子から段差のあるベッドに移る方法やお風呂やトイレに行く際にどう立ち上がるのかという運動の方法など、理学療法士はその動きをサポートする仕事なので、一番効率のいい方法やより負担をかけない方法を、こまごまと指導し一緒にやってお手伝いするわけです。
理学療法士は病院に所属しているのが原則で、ドクターの指示のもと、病院でリハビリの指導をして理学療法を提供する役割です。なので、自費リハビリの場合、理学療法士はあくまで、一緒にトレーニングをして同じ方向を向いてサポートをすることに徹しています。ですが、それが大きな力になります。
個々に合ったリハビリを継続することが大事
高齢者に限らず、リハビリを必要とする方は幅広い年代にいます。そして、治したい改善したいと強く望む箇所も違います。脳卒中の場合では、長く言語や手足の麻痺が残る場合があります。脳の場合は神経は元に戻らない。ただ、どこまで回復するのかというゴール設定の相談には応じて一緒に考えるのが自費リハビリの理学療法士の姿勢です。
もし、右利きの人が脳の障害で右手でお箸やスプーンを使うことが困難(時間がかかる)となれば、保険内であれば「右手で食べること」を諦め、ゴールの近い「左手で箸・スプーンを使い右手でお茶碗を持つ・支えることができる」ようにするリハビリになります。一方、保険外の自費リハビリではご本人が希望する「右手で食べられるようにする」リハビリを回数や時間に関係なく、リハビリ専門家とともに目指すことができます。
保険内だと「本人が希望するリハビリを受けられない」ということも、保険外だと「本人が希望するリハビリを受けられる」を実現できるのです。
リハビリで少し動くようになるのは、ダメージをうけた細胞の周りの生きている細胞が代わりに補ってくれるため。それをもっと強化していけば、動かせるようになったり、お茶碗やお椀を持てたりできるようになることもあるからです。
そのためには、集中的にリハビリを続けなければいけません。そもそも、どういうリハビリをすればいいのか、何が合ってるのか、情報は多くても自分ではなかなかわからない。そういう場合の相談にも応じることはできます。
細かな疑問や不安、ちょっとした動作で迷ったときに、相談できる相手がいると精神的にほっとして前向きになれるのでは思います。
ただ、自費という全額自己負担のリハビリは、年金に頼る暮らしだと負担が大きく、生活に余裕がないと難しいかもしれません。保険を使える人は保険を使った方がいいのです。保険が使えない人、もっとリハビリを継続したい、または点数が足りないという方のリハビリは自費で承ります、ということです。
脳血管疾患の重度の方で最大180日、それを超えると医療保険でリハビリは受けられません。それでもリハビリは継続することが大事です。若い人や中年もそうした病になります。病でダメージを受けた体の機能が少しでも改善され、一歩ずつ「また、できる」ようになれば生きる意欲につながるでしょう。
保険の制度の流れもあると思いますが、これから、自費リハビリを利用する人は増えていくのではないでしょうか。